JOURNAL 01

自分らしく美しく歳を重ねる【栄養コンサルタント エリカ・アンギャル(前編)】

今を生きる私たち現代人は、忙しさや周りの環境により食生活が乱れたり、毎日入ってくる情報もやらなければいけないこともいっぱいで、常にストレスにさらされており、カラダが酸性化しやすくなっています。
そこで、Well&Bのインタビューコンテンツでは、いつも魅力的なあの人が、どのような考え方やインナーケアをして自分の心とカラダと向き合い、整えているのかにせまります。心地よく理想のライフスタイルのヒントを一緒に見つけていきましょう。

Vo.1 栄養コンサルタント エリカ・アンギャル

【プロフィール】

シドニー工科大学卒業、健康科学学士。ネイチャーケアカレッジ卒業(栄養学)。2004年から8年間、ミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントとして世界一の美女を目指すファイナリストたちに「美しくなる食生活」を指南。2015年からNHK WORLDの医療情報番組"Medical Frontiers"でプレゼンターを務める。栄養学、薬理学、生理学など予防医学における幅広い専門知識を駆使し“内側からより美しく、心も身体もすこやかに輝く”をテーマに、ハッピーな毎日のための食とライフスタイルを発信している。

———エリカさんがインナービューティーを意識したきっかけはなんですか?

元々栄養学や東洋医学を学んでいたのですが、2001年頃に世界各国でしわと食べ物の関係性に関する論文がたくさん出てきた中で、食生活を変えると肌が変わることを学び、意識するようになりました。
日本でも海外でもスキンケアやコスメのマーケティングが強い傾向にありますが、外側のアプローチだけではなく、何を食べるかが肌に大きな影響を与えるということに気づきました。

———インナーケアの重要性を学ぶ上で、なぜそれを美と絡めて発信しようと思ったのですか?

栄養学を学んでいたころは「健康」や「病気に効果的」ということを中心に発信していましたが、若くて健康的なときは、予防医学と言われてもモチベーションも上がらないし、興味も沸きづらいですよね。でも「美しくなる」という観点なら聞く耳を持ってくれる人も多いかなと思ったのがきっかけです。その当時は外側からのアプローチがほとんどで、インナービューティーについて発信している方もほとんどいなかったですが、ここ20年ぐらいでたくさんの論文や研究が出てきて、より詳しい情報を学んで発信できるようになりました。

———エリカさんがわかりやすく発信してくださることで意識する方も増えていそうですよね。

少しでも食に対する意識が高まって、皆さんが美しく歳を重ねることができるようになるのが私の目標です。

———インナービューティーで1番初めに意識した方がよいことはなんですか?

特に日本は、この30年ほどで手作りのご飯からコンビニやスーパーで売られているような出来合いのものを食べることが増えましたよね。まずはなるべくパッケージに入った食品ではなく、ホールフードを摂ることを意識してほしいです。

———特に摂った方がいい食材などはありますか?

日本人の消化酵素や腸内細菌叢に合わせたものを摂ることが大切です。和食はもちろんのこと、バランスが取れた色とりどりの野菜や魚、良質な油、アルカライズももちろん重要な基礎となります。

———アルカライズはインナービューティーにおいて、ベースとなる概念ですよね。

そうですね。海外では多くの人がアルカリ度の高い野菜を中心としたグリーンパウダーやサプリメントを飲んでいたりと、アルカライズはインナービューティーや健康において当たり前の概念としてあります。有名な海外セレブも90年代ごろから取り入れていましたし、男性でもグリーパウダーを積極的に飲んでいる方が多いです。

海外は特にアルカライズ=ケール、ブロッコリー、ほうれん草、クロレラ、スピルリナなどのグリーンズという認識を持っている方が多い印象です。野菜=フィトケミカルが摂取できるということを知っている方は、グリーンズの認知度に比べると以前は少なかった気がします。

———日本ではどちらかというとフィトケミカルに注目されて、アルカライズという概念を知っている方は少ないですよね。

日本でも昔から青汁などはありますが「グリーンズ」や「アルカライズ」という視点で取り入れている方は少ないですよね。日本人は「〇〇だけを摂ればいい」という偏った考え方の方も多いと思いますが、野菜にはそれぞれ異なるフィトケミカルや栄養素が含まれていて相乗効果があるので、ぜひアルカライズを意識して様々な種類の野菜を取り入れてほしいです。

———逆に避けた方がいいものはありますか?

よくない油やトランス脂肪酸、人工甘味料、人工香料、添加物はまず避けるように意識したいですね。

———先ほども日本食の話がありましたが、エリカさんが思う日本食のすばらしさはどういったところですか?

数えきれないぐらいたくさんの利点があります。昔ながらの一汁三菜には30品目ほどの食材が入っていて、色々なフィトケミカルや食物繊維、たんぱく質や炭水化物、良質な油や海藻、発酵食品などを取り入れることができます。また会席料理は、前菜から始まり、最後に炭水化物で終わる血糖値を上げにくい食事の順番になっていますよね。栄養のバランスも優れていて、とてもよく考えられているなと感じます。

また調理方法も蒸したり煮たり、水を使う方法が多いと思います。海外はドライヒート(焼く、炒める)の調理法が基本で、これが老化を促進するAGEsといわれる物質を生成するのです。日本の水分を多く使う調理方法はAGEsの生成が少なく、エイジングの抑制にとても影響しています。AGEs は肌だけではなく、糖尿病・メタボリックシンドローム・心臓病・がんにも関係していると言われています。

食の欧米化が進んでいますが、日本食は、世界の中でも1番と言っていいぐらい素晴らしい食事だと思うので、ぜひ日本食を意識して食べるようにしてほしいです。

———今、海外で美容や健康関連で注目されていることはありますか?

日本でも注目されていると思いますが、腸内細菌叢は常に新しい菌について研究がおこなわれています。
また、腸内細菌叢だけではなく「リーキーガット」という概念も今特に注目されています。腸は元々、非常に薄い腸管上皮細胞と粘膜で保護されているのですが、リーキーガットとは、この腸のバリアが傷ついて、完全に消化されていない食べ物や、細菌、ウイルス、毒素などが血流に漏れだすことを指します。ですから、本来身体に取り込むべきではない有害物質まで取り込むことになり、花粉症や肌荒れなどさまざまな不調を引き起こします。

腸内環境を整えようとするといい菌を摂ることばかりに意識が向きがちですが、腸壁を健康な状態に保つことも同じぐらい重要です。リーキーガットはさまざまな炎症だけではなく、老化も促進すると言われています。

———リーキーガットはどういったことが原因で引き起こるのですか?

食生活の乱れ、ストレス、運動不足、睡眠不足、農薬、環境化学物質などが影響します。いい菌を摂っていても、生活が整っていないと意味がなく、総合的なアプローチが必要です。

そして、食べるものの多様性も重要です。色々な食べ物から異なる栄養素を摂ることで、菌のえさにすることができます。